「PCR検査」という言葉を、新型コロナが流行し始めて、初めて聞いたような気になっていました。
しかし、10年以上前に読んだ本の中で「PCR装置」について触れられた項目があったことに、今夜気づきました。
「生物と無生物のあいだ」(福岡伸一:著)講談社現代新書
ISBN978-4-06-149891-4
表題からも、ウイルスを扱った本であることは読み取れると思います。
ここで述べられている「PCR装置」は1988年のもの。でもその原理や機能は、今でも変わっていませんでした。
この本の中で述べられているPCR装置の機能は、実にシンプル。
温めて冷やす、これで数分。これを2時間程度繰り返すことで、遺伝子を倍々ゲームで増やしていくというもの。
それまでは、大腸菌の力を借りて、DNAのサンプルを増やしていたものが、この装置の登場で一気に時間短縮が図れるようになった、とのことです。
それが、今、ターゲットを新型コロナウイルスのRNAに特化した検査液を使って検出検査をしている、ということのようです。
この本を一通り読み直してから、改めて考えると、ニュースで「擬陽性」とか「偽陰性」とかが出てくるケースがある、ということもスッキリと腑に落ちました。
詳しくは、是非この書籍を手に入れて読んでみていただきたいのですが、ポイントとしては
・生物学の実験では、理論より実験結果が優先される。エラーは常に起こる。
そのエラーがミスでは無かった場合にこそ、その原因の中にとんでもない発見があったりする。これを怠ってしまうと理研のエプロン女史とか野口英世(アメリカでの評価は低い)のようなことが起きる、ということでしょうか。
・DNA二重らせんは、(生)物の種類ごとに違う
・DNA二重らせんは、ACGTの4パーツだけで構成(アナグラムGACTですね)
・AとT、CとGは対にくっつく組み合わせになれるが、それ以外はだめ。
※これは、Aが鍵A型+、Tが鍵A型-、Gが鍵B型+、Cが鍵B型-の形の腕をしているから
※例えば、ATCという部分に対して、対面はTAGというパーツしかくっつかない
・DNA二重らせんは、1本目がたとえば「あ~ん」の順なら、2本目は必ず「ん~あ」の順に並んでいる
そして、PCR装置に関連する性質として・・・
・DNA二重らせんは、温めると二重らせんがほどけて、冷やすと二重らせんに戻る。
これらの性質を利用しているのがPCR装置です。
人為的に目的のウイルスのDNAの「パーツ」をたっぷり入れた溶液を準備する【これがミソ】
この中に、検体(ごった煮のDNA)を入れて、温める。DNAほどけて、1対1つだったのが、バラの2つになる。
バラになった2つには、「パーツ」がくっつく。
が、この場合、パーツの素が、そもそも人為的に準備された「目的のウイルス」用のパーツなので、完成できるDNAはそのウイルスのものだけ。
こうして、目的のウイルスのDNAだけが2つになったものが完成する。
この工程を何度も繰り返す。
1工程が6分かかるとして、60分で10回繰りかえせると仮定すると
1→2
2→4
4→8
8→16
16→32
32→64
64→128
128→256
256→512
512→1,024
1時間で1000倍。ここら辺からスゴイ
1,024→2,048
2,048→4,096
4,096→8,192
8,192→16,384
16,384→32,768
32,768→65,536
65,536→131,072
131,072→262,144
262,144→524,288
524,288→1,048,576
2時間なら100万倍に。
さらに、もし例えば1工程が半分の5分なら1時間に20工程できるので、1時間で100万倍になり、もし2時間あれば40工程で、その個数は1000兆個!
ウワォ
こうして人為的に増やして見つけやすくなった、目的のウイルスが見つかれば、陽性、となるわけです。
このコロナ禍の中で読み直してみると、喫緊の話題の分だけ頭にすんなり入ってきて勉強になりました。
本て、読むタイミングも大切ですね。